■G-Motionの改良/改造
G-Motionは、混合燃料さえ用意しておけば、納車された車体が届いたその日から乗り始めることができる。
また、車体そのものに多少の個性があっても、特別な加工を施さなくても乗ることができる。
そうした「素」の状態のG-Motionを、仮にノーマルと呼ぶ。
もちろん、ノーマルのままのG-Motionで何ら問題ない。
しかし、G-Motionという乗り物をしばらく試していると、改良/改造/工夫を施したくなってくる。
これはG-Motionがシンプルな構造を持っているが故にデコレーションを施したくなるというものでもあるし、また、見映えや性能を左右する自分なりの工夫を加える余地が残されているということでもある。
大きく分けると、G-Motionに対して行われる改良/改造は以下のカテゴリが考えられる。
この中で、(1)の装飾上の変更とは、例えば「ステッカーを貼る」「色を塗り替える」「パッドを別の色のものに変える」といった内容を指す。カスタムの中ではもっとも容易いものと言ってよい。
(2)で代表的なものを挙げるならば「ライト(前照灯)」「リフレクター」といった保安部品の追加などがこれに当たる。
将来的に、ホーンやウィンカーを付ける人も出てこないとは限らない。
(3)は(2)と重複する改良/改造が含まれる場合がある。「プラグの変更」「プラグケーブルの変更」「チャンバーの追加」「サイレンサーの追加」「エアクリーナーの変更」など、エンジンの性能を向上させるための改良/改造はここに含まれる。
(4)は車体そのものの性能を向上させるための改造ではなく、「ステップの滑り止めの変更」「ビンディングの装着」「アクセル&ブレーキグリップの変更」「ステアリングダンパーの装着」など、操縦者の上達や操作上の利便性のために付け足される加工がこれに当たる。
以下は、実際に行われている改良/改造の例。
▲(1)装飾系
▲(2)機能追加系
▲(3)チューンナップ系
▲(4)操作性向上系
■エンジン性能向上のためのテクニック (3:チューンナップ系)
所謂03モデル及び04モデル(G-Motion)のエンジンをパワーアップする方法について。(by 韓国のサービスマンによる方法)
1)
車体左右のカウルとリアタイヤを外す。
2) チェーンを駆動ギアごと外す。
3)
遠心クラッチが露出したら、右の写真の、赤い矢印←のボルト2箇所を外す(このとき、ワッシャーなどが隙間に落ちないように注意)。ボルトはかなり頑丈に締めてあるので、ショックドライバーなどでなければ動かない。
4)
緑の矢印→の円盤(クラッチ板)を外して、ひっくり返して元の位置に収める。
5)
マフラー(04だと、エンジン後方の黒い箱)を外す
6)
マフラーの内径を測り、穴の位置を決めているところ
7)
マフラー内は排気が非常に遠回りになっている(図-細い矢印→)ので、遠回りせずに吹き抜けるバイパス穴をドリルなどで空けて(図-太い矢印↓)排気の吹き抜けをよくする。
※右図は概念図で、実際のマフラー内/穴空け位置とは異なります。
8)
マフラーから伸びている排気管(燃料タンク右後方に排気口があるもの)は二度直角に曲がっているが、二度目の屈曲部分の手前を切断してしまう(これも吹き抜けをよくするため)。
後はキャブを調整(これはまた別項で)。
このチューンのキモは、
(1)〜(4)……クラッチ音を静かにする(アイドリング時の静穏性の向上)
(5)〜(8)……マフラーからの排気の吹き抜けをよくする(トルクは上がるが走行時の音はうるさくなる)
の2点。
特に、(5)〜(8)によって、発進時のトルクが猛烈に太くなり、衝撃的に加速性能が良くなり、中速以上からがさらに伸びる。改良を加えられたマシンは、発進時に身体が置き去りにされる(フロント側の足が浮く)くらいの加速になる。また、このトルクと加速があることで、ウィリーなどトルクに頼るテクニックも可能になる。
■初心者救済のための改良(ステップ) (4:操作性向上系)
G-Motionの乗りこなしの難しさは、スターティングポジションにある。と、思う。
フロント、リアそれぞれのホイールに足を入れ、ステップに立ち、フロントを左足(ナチュラルの場合)で起こす。その間、もっとも注意しなければならないのは、「足がホイールの奥に入っていかないようにする」ということなのだが、車体を斜めに寝かせた状態がG-Motionのスタート時の状態であるため、どうしてもステップに乗せた足が滑って、ホイールの奥に足が入ってしまう。そうなると、走り始めて車体が起きてきた途端に身体が背面側に傾いてしまい、バランスを取るのが難しくなって転んでしまう。
ステップにはスケボーやスノボなどに使われるようなサンドペーパー状の滑り止めが最初から標準装備されてはいるのだが、この滑り止めは水で濡れたり、泥や土、砂が付いただけで摩擦係数が一気に減少し……要するに足が滑りやすくなってしまい、すぐにホイールの奥に足が入りすぎてしまう。
これが初心者にとって最初にして最大の障害となっている。
この問題を解決するために、オーナー各位はステップの滑り止めをいろいろと研究工夫している。
ここでは、AZUKIのマシンに採用している改良4型金属ステップを紹介しておく。
通常、ステップの滑り止めは、靴とステップ面の摩擦を大きくする方法を考えて作られるが、改良4型金属ステップ(以下、改良4型)は、「足がホイールの奥に入らない」ということを最優先に考えている。G-Motionはナチュラル/グーフィーどちらからでも乗ることができるように作られているため、「穴の底」がない構造になっている。
そこで、爪先がぶつかる「穴の底」を作ることで、シューズの先端が当たってそれ以上奥に足が滑り込まないようにする、という目的で作られたのが、改良4型である。
向かって右側がリア用、左側がフロント用。
改良4型は、100mm足らずの金属プレート(厚み1mm程度)、マウント用金具×2から成っている。
プレートとマウントは4mm×20mmのボルト&ナットで固定しているが、爪先の荷重&本体の振動が伝わり緩みやすいので、ワッシャーとプレートの間に厚さ0.5mmの天然ゴムシートを切ったものを緩衝用ゴムワッシャー代わりに挟んでいる。
写真はリア用。
横から見た図。
当初はゴムワッシャーを挟んでいなかったが、現在はプレートの前後とナットの内側の3箇所(計6箇所)にゴムワッシャーを挟んで、振動と荷重からくる緩みを防止している。
それでも一日も乗るとナットが緩んで脱落することがある。ナットの予備をいくつか持っておいたほうがよいだろう。
ステップ(カウル)は、リアホイールを支える金属板+ステップ下部にある硬質ゴムの3つを、片側4本ずつの木ねじで固定している。
この木ねじのうち車体右側(ナチュラルの場合)中央の2箇所を一度外し、改良4型ステップのプレートが内側を向くようにに取り付ける。
写真で見る通り、リア側にはリフレクターを付けているが、これとは関係なくリア側にプレートを寄せるようにしないと、「爪先を押さえる」という目的は達成されにくい。このマウント金具のサイズでは、足のサイズ23〜25cmの人にぴったりだが、それ以上大きい人は、マウント金具のサイズを工夫するか、プレートを外してしまってマウント金具の向きを逆にするなどの工夫で対応できると思われる。
この金属ステップの効用は、スターティングポジションを取るときに最大の効果を発揮するが、実際に走り出してしまうとほとんどここに爪先が当たることはない。「乗り始め」という初心者の最大の障害を軽減することが目的になっているため、ある程度上達して発進に慣れてきたら外してしまってもいい。
また、足のサイズが大きい人はこのプレート+マウント金具の方式以外の方法を採ってもいいと思われる。ステップ+金属プレート+ゴムダンパーを止めている木ねじは4mm×30mmだが、金属プレートを「厚みのあるゴムブロック」などに替え、木ねじを4mm×40mmくらいの長いものに替えてやれば、26〜8cmくらいのサイズの人にもフィットするものが作れると思う。
◆改良5型+4型ゴムステップ
改良4型金属ステップによって、「走り出し」の足の位置はほとんど解決されるが、車体左側のステップの端に土踏まずが当たるように乗る場合、ステップの円形の滑り止めの外側の樹脂部分が剥き出しになっている部分が、水や泥に濡れた場合に滑る。(特にコンバースのような突起の少ないシューズを履いている場合)
また、フロント側はともかく、リア側は土踏まずを起点にかかとが気持ち持ち上がるくらいが具合がいいようなので、土踏まずにだけ当たるように成形した厚さ6mmほどの波ゴムを金属ステップ同様ネジ止めしている。このとき、ゴムにはポンチなどで軽く穴を空け、木ねじとゴムの間にワッシャーを挟んでおくと、ゴムがちぎれにくくなる。この部分には常に体重がかかるため、どうしてもゴムはへたっていく。いわば消耗品なのだが、ワッシャーを挟んでおくと多少は寿命を延ばすことができる。
波ゴムの溝の向きは、切り出すときに好みに応じて微調整したほうがよい。
この波ゴムは、防振用として売られているもので、表裏に垂直に溝が掘ってあるが、厚みが9mmほどあるので、裏側の溝はすべて削ってしまって6mmくらいにするとちょうどよい(3mmでは厚みが足りなかった)。
フロント側はかかとと爪先の高さに差が出ないほうが乗りやすいようなので、ゴムは反対側まで全面にフラットに張ってある。
この辺りは馴れの問題もあると思うので、慣れてきたら外してしまって問題ない。
フロントの車体左側(ナチュラルの場合)のエンジン寄りの、カウルの樹脂が露出している部分(ステップの標準の滑り止めが付いていない部分)は、もっとも多く足を乗せる場所でもあるがそこには滑り止めがないのでこういう大がかりな方法を採っているが、スケボー用の滑り止めテープなどを露出している部分に貼り付けるだけでもずいぶん違う。
ただし、このリア側の4型ゴムステップは、ある程度慣れてきたら外してしまってもかまわない。(2004/12/18から外した)
G-Motionで初心者が最初に躓くのは「スターティングポジションを取りにくい(足が奥に入ってしまう)」という部分だけなので、改良4型金属ステップさえあれば、リアのゴムは最終的にはなくてもよいかもしれない。
■ビンディングの装着 (4:操作性向上系)
TIGINICSの他に、TAMIというメーカーがTAMI-Wheelmanというチェーン駆動のWheelmanを生産している。
このメーカーの出しているオプションに、TAMI-Wheelman用のビンディングがある。フロントホイール及びリアホイールに装着して、足が抜けないように固定するもので、ウィリーやハイサイドなどのトリックメイクのときに必要になるものだという。
ハイサイドは……まあ、先の話だとして、またウィリーをしないまでも、フロントホイール側の足を固定するだけでも、操作性は増す。特に、ギャップを越えるときやダートを走る場合の上下の振動で足が浮かないので、車体を制御しやすくなる。
TAMI-WheelmanとWheelman/G-Motionはホイールの固定位置がほとんど同じなので、TAMI-Wheelman用のビンディングは、Wheelman/G-Motionにも利用可能だ。
ただし、このビンディングは国内ではムラックス(TIGINICS
JAPAN)でしか扱っていない。在庫切れの場合は入荷待ちか個人輸入以外に入手方法はない。
■エンジンの換装 (3:チューンナップ系)
G-Motion04のエンジンには、TG43とTL43の2種類があるが、日本国内に入ってきているモデルはTG43搭載モデルである。TG43は三菱メイキTL43を元にTIGINICSが開発したクローンモデルで、TL43との違いは「エンジンの精度(ピストン、シリンダーなどの内部の研磨精度など)」と言われている。
使用するプラグ、タンク容量の他、マウント用のボルト穴位置などもTG43とTL43は同じなので、エンジンの換装が可能である。
※実際にG-Motion04からTL43に積み替えたマシンは実在する。
ただし、TG43とTL43では、キルスイッチの位置が異なる。TL43のキルスイッチは、TL43の位置より向かって左下(後方下)にあるため、換装するときはキルスイッチの位置を変えた方がよい。
また、ノーマルのままではマフラーの排気口は車体左側向きになる。グーフィーの場合はそのままで問題ないが、ナチュラルの場合はマフラーは逆向きに付けなければならない。
TL43とTL43の上位モデルのTL52は、シリンダーのサイズ(TL43は42.7cc、TL52は51.7cc)以外は機関の寸法やタンク容量、マウント用のボルト穴位置などすべて同じと思われる(キルスイッチ、マフラーの向きなどもTL43と同様と思われる)。
このため、エンジンをTL52に換装することは技術上可能である。
ただ、TG43とTL43の比較の結果から、「速くなりすぎる」可能性が考えられるようだ。
実際にTL43に積み替えたG-Motionでは、瞬間的に時速36km/hのトップスピードを記録しているという情報がある(byンSINさんのハンディGPSによる実測値)。TL43を積んだマシンはすでに充分じゃじゃ馬になっているが、これにTL52を積んだ場合、加速度、トルク、トップスピードのすべてが、さらに暴力的なものになることが容易に予見される。
TL43、TL52への換装については、ノーマル、またはTG43をチューンナップしたマシンなどで充分に練習し、速さと加速度に慣れ、車体を完全に操れるような、中〜上級者になってから実行すべきで、ビギナーが最初からエンジン換装に挑戦するのは危険が伴う。
TL52はSINさん他数名がG-Motion04のTG43と換装済み。(2005/11現在)
G-Motionはエンジントラブル、駆動系(チェーン/ベルト/スプロケットなど)にアクシデントが発生した場合、後輪がロックして動かなくなることが多い。そうなると、本体を移動させるには担ぎ上げて運ぶ以外の方法がなくなる。車やバイクなどで回収できる場合はともかく、車やバイクを置いてある場所から遠いところまで走ってきてしまった場合、さらには車やバイクが入れない場所でトラブった場合、やはりどうにかして自力で移動させなければならない。
車輪付きの背負子などを使えば自走させずに運ぶことは可能だが、背負子は大きさ/重さ(2kg)があり、トラブルが予見されるとき以外は、気軽に携行できるとは言えない。
この問題に対応するために、「緊急時にG-Motionを回収するキャリーユニット」が必要になる。
理想を言えばG-Motionを乗せられる台車のようなもの(可動トレーなど)が望ましいのだが、遠乗りのときはできるだけ荷物を減らしたい。
そこで、普段はG-Motionに直接取り付けておき、必要なとき(マシントラブルが実際に起きたとき)に本体に取り付けて使う仕様のものが望ましい。
G-MotionのパンにはM8(8mm)のボルト穴が6箇所ほどある。このうち、一番リアタイヤに近いボルト穴にステーを取り付け、直径8〜10cm程度のウィール/キャスターなどを取り付ければ、ロックしたリアタイヤを浮かせ、かつ、G-Motionが自立する運搬用補助輪になる。
写真左は、キックボード用のウィール(緑)に、ステー代わりのL字アングル(黒)を取り付けたもの。ウィールとアングルはM8/60mmのボルトで止めてある。ウィールとボルトの間にM8のパイプを挟み、間にチェーンルブなどの不揮発性潤滑油を充填しておく。
これを2個作る。写真の試作5号ではパン側に固定するボルトがそれぞれ1箇所しかないため、振動を与えながら長距離を移動させると、ボルトが緩んで車軸の向きがずれてしまう可能性がある。パン側のボルト穴は1列2箇所しかないので、パンにM8の穴を増やすか別の改良を考える必要があるが、「緊急時にちょっと使えればいい」という程度であれば現状の試作5号でも足りるものと思われる。
普段はこれをオリグメントバーのリアシャシー側のボルト付近に固定しておくと邪魔にならない。
オリグメントバーを固定するボルトにL字のステーを取り付け、ここにキャリーユニット×2個を重ねてボルト締めしておく。
くれぐれも、キャリーユニットを取り付けるためのボルトを紛失しないよう気をつけること。ステー周辺に付けておくと無くさない。
実際に使用するときは、キャリーユニットをパンに取り付けた後は、手押しするか前輪側シャシーにロープなどを掛けて引っぱるとよい。
写真右は、リアタイヤを乗せるミニ台車という発想で作られた試作3号。センチュリーローラーというヒーリーズのレプリカ品を利用して作られているが、車軸の幅が狭いため、G-Motionが自立しにくいという欠点があった。また、リアタイヤにチェーンを回すレプリカでは使用できない。ダイナモ(圧電素子か何か?)+LEDがウィールの中に埋め込まれていて、ウィールが回転すると発光するという機能があった。注意を促しながら移動する、という目的には合っていたかもしれない。
Caution
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